【タイトル】 『ゴム印のおまじない』  脚本 ミチ  【登場人物】 相田 悟史(あいだ さとし・15)♂  主人公。中三。  ちょっと冴えない感じの少年。  身長168cm 体重56kg 川野 麻衣(かわの まい・15)♀  ヒロイン。中三。活発な少女。  身長161cm 体重48kg 佐々木 亨(ささき とおる・15)♂  悟史の友人。中三。  クラスのリーダー的存在。  身長170cm 体重59kg  【本 文】 ○ 中学校・全景   ごく普通の公立中学校(季節は3月)。 悟史(M)「今日、僕らはこの中学を卒業し  た」 ○ 同・校門   『第二十三回 卒業証書授与式』と書か   れた、立て看板。 悟史(M)「でも、一つだけ、勇気がなくて  伝えていない気持ち……」 ○ 同・体育館   卒業式の様子(校長がスピーチしてい   る)。 悟史(M)「僕は相田 悟史 中三」   卒業生達の列にいる、相田 悟史(15)   の姿。 悟史(M)「同級生の川野 麻衣」   同じクラス、女子の列にいる、川野 麻衣   (15)の姿。 悟史(M)「今日が、最後のチャンスだ……」 ○ 同・教室   卒業式を終え、雑談している生徒達(中   には泣いていたり、カメラ付き携帯電話   で記念写真を撮ったりと、思い思いの時   間を過ごしている)。   と、麻衣が自分のゴム印(出席簿などに   使う、生徒の名前が彫られたもの)を手   に登場。悟史に話しかける。 麻衣「(ゴム印を見せ)悟史君もゴム印、持  ってるよね?」 悟史「……?」 麻衣「ほら、出席簿に使うゴム印、卒業生の  はもういらないからって、先生からもらっ  たでしょ」 悟史「(ゴム印を取り出す)ああ、これ?」 麻衣「(照れ臭そうに)ちょっとでいいんだ、  貸してくれないかな?」 悟史「やだよ、お前に貸して無事に戻ってき  たもんないし」    ×   ×   ×   フラッシュ   壊れたmp3ウォークマンや破れた漫画   本、DVDなどのカット。    ×   ×   × 麻衣「(手を合わせて)すぐに返すから、お  願い!」 悟史「(からかう感じで)ガサツ女には貸し  てやんないよ〜だ」 麻衣「な、何よ、酷い!!」 悟史「酷いのは、麻衣のガサツな性格の方だ」 麻衣「む、むかつく〜っ!!」   麻衣、怒りにまかせて腕をグルグル振り   回し、悟史の頭や額をポカポカ叩く(ギ   ャグ調の描写で)。 悟史「(腕で防御しつつ)イテッ、イテッ」 麻衣「え〜ん!」   麻衣、小走りに教室を出て行く。 悟史「な、何だよあいつ……」   と、麻衣と入れ違うように、佐々木 亨   (15)が教室に入ってくる。 悟史「はぁ……」 悟史(M)「今日が最後のチャンスなのに…  …」   亨、悟史に声をかける。 亨「(呆れた感じで)また喧嘩か? よくも  飽きずに……」 悟史「(バツが悪そうに赤面)」 亨「(悟史の額を見て)それでも、頭は麻衣  のことでいっぱいか」 悟史「!?」   悟史の額には、奇跡的に麻衣が手に持っ   ていたゴム印によって、無数に押された   『川野 麻衣』の文字。 ○ 同・男子トイレ   悟史と亨の姿(悟史、顔を洗い、インク   を取っている)。 亨「(タオルを差し出す)ほら」 悟史「サンキュー」 悟史(M)「こいつは、佐々木 亨 一年か  らのくされ縁だ」 亨「お前、最近女子の間で流行ってる『ゴム  印のおまじない』って知ってるか?」 悟史「(タオルで顔を拭き)何それ……?」 亨「(意外そうに)知らないの?」 悟史「うん」 亨「(ニヤリとして)……よし、特別に教え  てやろう!」 悟史「???」 亨「(手を見せ)おまじないには二種類あっ  て、『好き』なら手の甲、『嫌い』なら手  のひらに相手のゴム印を押してお祈りをす  る」   悟史、興味深げに聞いている。 亨「そうすると、『好き』なら相思相愛、  『嫌い』なら縁切りがうまくいくって話だ」 悟史「へぇー」 亨「(ニヤリと)……」 亨(M)「って、本当には逆で『好き』なら  手のひらなんだけど」 亨「(真面目な表情で)実は俺も、この方法  で好きな子に告白しようと思ってる」 悟史「マ、マジで!?」 亨「大マジ」 亨(M)「これも嘘だけど」 悟史「そう、なんだ……」 亨「お前も麻衣のこと好きなら、さっさっと  告白した方がいいぞ」 悟史「!?」   悟史、驚いて後ずさり、後頭部を壁に激   突。 亨「分かりやすい奴……」 悟史「(明らかに動揺)なっ、なっ……」 亨「バレバレなんだよ。クラス全員、知って  るぜ」 悟史「……(大赤面)」 亨「水くさいよなー。結構お前には友情感じ  てたのに」 悟史「(照れと困惑の混ざった表情)……」 亨「もう卒業だぜ、告白とかしないの?」 悟史「そりゃ、出来れば……でも、勇気がな  くて、つい憎まれ口叩いて、いつもケンカ  になっちゃうんだ……」 亨「ふーん……」   亨、悟史の首に腕を回す。 亨「お前がその気なら協力してやる。告白す  るかしないかは、お前しだいだ……」 ○ 同・教室   悟史と麻衣、二人きり。 麻衣「(教室内を見渡し)あれ? クラスの  みんなは?」 悟史「(緊張した表情)と、亨が面白い見せ  物があるからって、みんなを連れ出したら  しい……」    ×   ×   ×   廊下、ベランダ、掃除用具入れ、に隠れ   て、教室内の様子を伺っているクラスメ   イト達の姿(ギャグ調で)。   亨は廊下にいる。    ×   ×   × 麻衣「えーっ! 私も見たかったな〜。それ、  どこでやってるの?」 悟史「(冷や汗)ど、どこでって言われても  ……」    ×   ×   ×   フラッシュ 亨「(真面目な表情で)二人っきりになれる  よう、手筈は打った! 骨は拾ってやる。  当たって砕けてこい!!」    ×   ×   ×   麻衣、窓際に立ち、外を見つめる。 悟史「(麻衣を見つめる)……」 麻衣「(窓の外を見つめたまま)卒業、しち  ゃったね」 悟史「ああ……」   麻衣、振り返り悟史を見つめる。 悟史「(視線が合う)!?」   悟史、照れて視線をそらしてしまう。 麻衣「(ちょっとショック)あっ……」 悟史(M)「こ、ここで怯んでどうする!」  悟史「そ、そうだ……麻衣のゴム印、貸して  くれないか?」 麻衣「え……? う、うん……(ゴム印を差  し出す)」   悟史、自分の手の甲に、麻衣のゴム印を   押す。 麻衣「!? それが、悟史君の気持ちなんだね  ……(悲しげ)」 悟史「(緊張しつつ)ああ……ぼ、僕は、麻  衣のことが……」 麻衣「(言葉を遮るように)酷いよ……」 悟史「え……?」 麻衣「どうして、そんな酷いこと、目の前で  するの!?」 悟史「(訳がわからず)だって、これが僕の  正直な気持ちで……」 麻衣「(涙が浮かぶ)!!」   麻衣、悟史の頬をビンタする。 悟史「!?」   麻衣の目から涙がこぼれる。 ○ 同・廊下 男子生徒A「な、何か凄いことになってるな  ……」 亨「……(罪悪感を感じ複雑な表情)」 ○ 同・教室 悟史「な、何だよ酷いって!?」   麻衣、泣いている。 悟史「ぼ、僕は……麻衣のガサツな所も、男  勝りな所も……」 麻衣「(涙がポロポロとこぼれる)な、何よ、  ケンカ売ってんの!?」 悟史「いや、違う! 今日は違うんだ!!」 麻衣「……?」 悟史「ぼ、僕は……麻衣のこと……」 悟史(M)「勇気を出すんだ……」 悟史「好きだ……!!」 麻衣「!?」 悟史「……(赤面)」 麻衣「ど、どうして……?」 悟史「(照れつつ)どうしてって、す、好き  なもんは仕方ないだろっ!」 麻衣「だって、手の甲に『嫌い』のおまじな  いしてるじゃない……」 悟史「え……? 『好き』って手の甲じゃな  いの??」 麻衣「ち、違うよ〜」 悟史「え? え? だって亨が……っ!」    ×   ×   ×   フラッシュ   トイレにて。 亨「実は俺も、この方法で好きな子に告白し  ようと思ってる」    ×   ×   × 悟史(M)「あ、あいつも間違ってたら大変  だ……」   悟史、教室を出ようとするが、麻衣が引   きとめる。 麻衣「待って!」   麻衣、ペンを取り出し、悟史の手の甲に   ある『川野 麻衣』の文字をバツ印で消   し、手のひらに自分のゴム印を押す。 麻衣「ちゃんと、おまじない直しておかなく  ちゃ……」   そして、悟史のゴム印を自分の手のひら   に押し、ペンでイラストを描き始める。 悟史「?」 麻衣「これが私の答えだよ……」   二人の手のひらを合わせると、そこには   二人の名前を包む、相合傘のイラスト。 悟史「……!!」   二人、照れ臭そうに顔を見合わせ、微笑   む。   と、教室のドア付近から聞こえてくる声。 亨「お、おい押すなよ、うわ〜!!」   廊下、ベランダ、掃除用具入れに隠れて   いた亨やクラスメイト達が、教室内に勢   いよくなだれこんでくる。   驚く悟史と麻衣。   悟史、亨の存在に気付き、声をかける。 悟史「亨!」 亨「(ビクッと)!?」 悟史「おまじない、間違ってたぞ! もしお  前も告白するなら、気を付けろよ」 亨「(バツが悪そうに)え? あっ、そ、そ  うだな……」 悟史「ありがとう……」 亨「え……?」 悟史「おまじないは間違ってたけど、勇気を  もらったような気がする」 亨「……」   悟史と麻衣、クラスメイト達に手荒い祝   福を受ける(悟史、男友達にヘッドロッ   クされたり、麻衣は、女友達に肩をバシ   バシ叩かれたり)。   そんな二人の様子を少し離れた所から見   ている、亨と男子生徒Aの姿。 男子生徒A「あの二人もおまじないしてたみ  たいだけど、やっぱ効果あるのかな?」 亨「(苦笑して)来年の今頃は、また新しい  おまじないが流行ってるのかもしれないけ  ど……」   悟史の麻衣、二人の笑顔。 亨「一つのきっかけになるなら、まんざらで  もないかもな……」    完(400字換算 14枚)