【タイトル】 『ネコ日和』  脚本 ミチ  【登場人物】 ミケ→三宅 実音子(みやけ みねこ)♀  主人公。  天使の力でネコから人間の少女に生まれ変  わる(14歳位)。  身長156cm 体重43kg レミエル(Remiel)♂  下級天使。人間の見た目で16歳位。  身長172cm 体重58kg 森下 篤樹(もりした あつき・14)♂  人間の中学生。  身長168cm 体重56kg ウリエル(Uriel)♂  上級天使。人間の見た目で25歳位。  身長180cm 体重78kg  【本 文】 ○ 街並み・全景(回想) ミケ(M)「野良猫として育った私は、不幸  な猫だと思っていた」 ○ 同・路地(回想) ミケ(M)「この町にたどり着くまで、ずい  ぶんと辛い思いもした」   仔猫時代のミケ、町をさまよう。   サラリーマンの足元に近付くが、足蹴に   される。 ○ 同・空き地(回想) ミケ(M)「いつの間にか『ミケ』という名  前で呼ばれ、私にも心落ち着ける場所が見  つかった」   幼い頃の篤樹と友人たちが、ミケと遊ん   でいる様子。 ミケ(M)「それから数年。もう私は長くな  い……」   年老いたミケ、日向ごっこをしている。 ミケ(M)「でも、私には心残りが一つだけ  ある……」   ゆっくりと目を閉じるミケ。 ミケ(M)「そう、心残りが……って!!!!」   ミケが目覚める(半透明の幽霊状態)と、   目前にはお墓(手作りの墓標に「親愛な   るミケ ここに眠る」と書かれている)。 ミケ(M)「わ、私は死んだの!?」 レミエル「やぁ、気分はどうだい?」   目の前に現れる天使レミエル。 ミケ「……?(気付く)」 レミエル「ボクは下級天使のレミエル。おっ  と、下級だからってバカにしちゃいけない  ぜ。ボクは将来有望な下級天使なんだ」 ミケ「ニャ?」 レミエル「何の用だって? ボクは君を成仏  させるために天上界からやってきたのさ」 ミケ「……」 レミエル「さっ、天上界に行こう……」 ミケ「ニャア――っ!!」   ミケ、爪でレミエルの顔をひっかく。 レミエル「うぎゃ〜〜〜っ!!」   以上、回想終わり。 ○ 同・空き地   ミケのお墓前。 レミエル「もう半年だよ!? いい加減、成仏  してくれよ〜」 ミケ「……」   霊体のミケ、自分のお墓を見つめている。 レミエル「猫一匹、成仏させられないなんて、  天上界のいい笑い者だよ……。同期の連中  は順調に上級天使への道を歩んでいるのに」 ミケ「ニャ!(そっぽを向く)」 レミエル「はぁ……いくら野良猫とは言え、  無理やり魂を浄化することは出来ないしな  ……」 ミケ「……!(気付く)」   森下 篤樹(14)、友人の亮、亜季の   三人がお墓の前に。 篤樹「はい、ミケの好物の今川焼き」   今川焼をお供えする。 ミケ「……」 ミケ(M)「この子達は、私の友達……」    ×   ×   ×   フラッシュ   ミケが篤樹たちと遊んでいる様子。    ×   ×   × ミケ(M)「私のお墓まで作ってくれて……  半年経った今も、毎日お参りに来てくれる」 篤樹「オレ……父さんの転勤で、引っ越すこ  とになったんだ」 ミケ「!?」 篤樹「一週間後に旅立つ。だからもう、ミケ  に会うことが出来ないんだ。ごめんな……」 ミケ「……(ショック)」   篤樹たち、立ち去る。 レミエル「確か彼は、君の一番の仲良しだっ  たね……。でも、成仏するいい機会じゃな  いか」 ミケ「ニャア、ニャニャ……(元気なく)」 レミエル「やり残したことが一つある?」 ミケ「ニャ、ニャニャニャア」 レミエル「彼にお礼が言いたい……? 気持  ちは分かるけど、猫が突然しゃべったら、  気持ち悪がられるだけじゃない?」 ミケ「ニャア、ニャニャ、ニャア!」 レミエル「なら、いっそ人間にしてくれ?   む、無茶言うなよ!! 反魂の術さえ大変な  禁呪なのに、猫から人間なんて……」 ミケ「ニャ、ニャアア、ニャニャ!!」 レミエル「じゃあ成仏してやらないだと!?   ま、まさか、天使が野良ネコに脅迫される  なんて……(呆然)」 ミケ「ニャ、ニャニャア……」 レミエル「一週間でいいから、か……」 ミケ「……(寂しげな表情)」 レミエル「はぁ……」   レミエル、空を見上げる。 レミエル「神様、見てないだろうな……」   レミエル、ミケに手をかざす。 レミエル「いつもみたいに昼寝中であります  ように……!」   レミエルの手のひらに光の粒子が集まり、   球体となる。   その球体がミケを包み込む。 ○ 天上界   豪華なイスに座ったまま、神様が昼寝し   ている(ギャグ調で)。 ○ 中学校・外観(朝) 担任の声「転校生を紹介する……」    ×    ×    ×   フラッシュ レミエル「人間の名前を付けて欲しい?   『ミケ』って名前だったし、もじって  『ミヤケ ミネコ』漢字で『三宅 実音子』   ってどう? いいセンスだろ?」 ○ 同・3−D   担任の隣りにいる、ミケこと人間の少女   になった三宅実音子。 実音子「三宅 実音子です! よろしくお願  いしますっ!!」 篤樹「……」 担任「森下の隣りが空いてるな、そこに……」   と、言い終わらないうちに、実音子ダッ   シュ。篤樹の隣りの席に着く。 篤樹「!? あっ、オレは森下 篤樹……よ、  よろしく……」 実音子「うん、よろしく!!」    ×    ×    ×   休み時間。   実音子の周りには人だかり。「趣味は?」   「特技は?」など、質問攻めにあってい   る(実音子はちょっと困惑気味)。   教室内にはレミエルの姿も(他の人に姿   は見えない)。 レミエル「……(心配そう)」 亜季「じゃあ、好きな食べ物は?」 実音子「今川焼!(笑顔で)」 篤樹「……!?」 ○ 同・外観 ○ 同・3−D   授業中だが、実音子は授業そっちのけで、   篤樹を見つめている。 実音子「(ニコニコ)」 篤樹「???(訳が分からず赤面)」 レミエル「……(ちょっと詰まらなそう)」 ○ 同・外観(朝) 実音子(M)「猫の時は違う……同じ目線、  同じ言葉」 ○ 同・屋上 実音子(M)「毎日が楽しくて……」   昼休み。実音子、篤樹、亮、亜季が楽し   そうにバレーボールで遊んでいる。 実音子(M)「彼の側にいるだけで、笑顔に  なれちゃう……」 実音子「私、高い所って大好きだなーっ♪」   亜季がミスして、ボールが転がる。   実音子、条件反射で四足歩行でボールに   向かってキャッチ(ギャグ調で)。 篤樹「み、三宅さん!?」 実音子「はっ!?(我に返り赤面)」 レミエル「まったく……(冷や汗)」 ○ 同・3−D   休み時間。 亜季「編み物を教えて欲しい……?」 実音子「うん!」 亜季「いいけど、もう5月だよ?」 実音子(M)「何だろう、この気持ち……」   実音子、亜季に編み方を教わりながら、   ぎこちない手つきでマフラーを編む(表   情は真剣)。 レミエル「……(複雑な表情)」 ○ 空き地・プレハブ小屋(夕) 実音子(M)「これってもしかして……」   廃墟と化したオンボロなプレハブの中。 実音子「青春って奴!?(嬉しそうに)」 レミエル「ボ、ボクに聞くなよ……」 実音子「友情って素晴らしいね!」 レミエル「友情ねぇ……」   実音子、所々破れたソファに腰掛け、マ   フラーを編む(半分ほど完成している)。 レミエル「何してるの?」 実音子「マフラー編んでるの。せっかく人間  の女の子になれたんだから、女の子っぽい  ことしたくて」 レミエル「ふーん」 実音子「完成したら、彼にあげるんだ。今川  焼とか、いつも貰ってばかりだったし、私  も何かしてあげたいの」 レミエル「別にいいけどさー(ちょっと嫉妬  している感じで)」   実音子は嬉しそうに編み物をしている。 レミエル「まぁ、これで成仏してくれるなら  いいけどさ」    ×    ×    ×   夜。   ソファでシーツに包まり寝ている実音子。   レミエル、シーツをかけ直してあげる。 レミエル「猫の姿ならまだしも、最近、人間  界も物騒だからな……」   プレハブの外で見張りをするレミエル。 レミエル「まぁ、天使がボディガードしてれ  ば安心さ。ここだけの話……」   実音子の寝顔。 レミエル「ボクも結構、君には友情感じてた  んだぜ(微笑む)」 ○ 街並み・全景 実音子(M)「楽しい時間はあっと言う間に  過ぎて……」 ○ 中学校・外観 実音子(M)「明日は彼が引っ越す日……」 ○ 天上界   昼寝中の神様。   うつらうつらとして、カクンと頭を下げ、   目を覚ます。 ○ 空き地・ミケのお墓前(夕) 亮「篤樹がいなくなると寂しいよ……」 篤樹「……」 亜季「明日、みんなで駅に見送り行くんだけ  ど、三宅さんも来てくれる?」 実音子「うん! もちろん!!」   篤樹、墓前に今川焼をお供えし、手を合   わせる。 実音子「……(切なげに篤樹を見つめる)」 ○ 天上界   神様が大きな水晶をのぞき込んでいる。 神様「むむ、これはどうゆうことじゃ……?」   水晶に映し出される、レミエルと実音子   の姿。 神様「ウリエルはおるかっ!」 ウリエル「はっ、ここに」   上級天使ウリエルが登場。 神様「この少女に、猫の魂を感じるのじゃ…  …。もしや、レミエルが……」   神様が立ち上がる。 神様「ウリエルよ、真相を確かめてくるのだ  っ!!」 ○ 空き地・プレハブ小屋(夜)   実音子が一生懸命編み物をしている。 レミエル「そろそろ寝ないと、明日起きられ  ないよ」 実音子「もう少し! もう少しで完成なの!!」   一生懸命な実音子。それを見つめるレミ   エル。 レミエル「そんなに彼のことが――」 実音子「?」 レミエル「いや、何でもない」   少し寂しげに、首を横に振る。 実音子「変なレミエル」 レミエル「はは、確かに(苦笑)」 実音子「本当に変よ。熱でもあるの?」   そう言って、自分の額をレミエルの額に   くっつける。 レミエル「!?(ドキッと赤面)」 実音子「……?」 ○ 駅へと続く道(朝) 実音子「ね、寝過ごした――っ!!(激走)」   走る実音子(両手にはマフラーの入った   袋)。ちょっと先をレミエルが走る。 レミエル「だから言ったじゃないか〜」 実音子「だって〜、でもマフラーは完成した  よ!」   実音子の行く手を遮るように、ウリエル   が登場。 レミエル「ウ、ウリエル様!!」 ウリエル「なるほど、確かに猫の魂が宿って  いるようだ……(実音子を見つめ)」 実音子「レミエルの知り合い……?」 レミエル「上級天使のウリエル様だ……(怯  えた表情)」 ウリエル「貴様、禁呪を行ったな……?」 レミエル「す、すみません……。で、でも…  …!」 ウリエル「……こちらの監視が甘かった責任  もある。我らが神も、お前が直ちに魂の浄  化を行えば、今回は目をつぶると仰ってい  る」 レミエル「えっ……?」 ウリエル「さぁ、早くしろ!」 実音子「レミエル……」   レミエル、拳をギュッと握り締める。 レミエル「分かりました……」   レミエル、実音子に向かって手をかざす。 実音子「……!!」   実音子、怯えた表情で目を閉じる。 レミエル「……大丈夫(実音子にしか聴こえ  ないように、そっと囁く)」 実音子「え……?」   レミエルの手のひらに光の粒子が集まり、   球体となる。   その光の球体を放とうとした瞬間、目標   をウリエルに変え放つ。 ウリエル「!?(避ける)」   レミエル、その隙を付いてウリエルにタ   ックルを仕掛ける。 ウリエル「なっ!」 実音子「レミエル!」 レミエル「今のうちに行くんだ!!」   ウリエルを必死に押さえながら。 実音子「で、でも……」 レミエル「いいから早く!! ちゃんと彼にお  礼を言うんだろ!?」 実音子「レミエル……」 レミエル「行け! 行くんだ!!」 実音子「う、うん……」   実音子、駆け出す。 ウリエル「貴様、こんなことをしてただで済  むと……!」 レミエル「ボクは猫一匹、成仏させられなか  った落ちこぼれだ! でも猫一匹の願いも  叶えられないで、何が天使だっ!!」 ウリエル「!?」    ×   ×   ×   息を切らせ、一生懸命走る実音子。 ○ 駅・外観   上野駅や東京駅など、新幹線が止まる大   きな駅。 ○ 同・新幹線ホーム   篤樹と両親、亮、亜季、他数名のクラス   メイトの姿。 篤樹の母「先に乗ってるわね」   両親、新幹線の中へ。 ○ 駅へと続く道   走る実音子、額に汗が光る。   遠くに駅が見える。 ○ 駅・新幹線ホーム 亜季「三宅さん来ないね……(心配そうに)」 篤樹「……(階段を見つめる)」   しかし実音子の姿はない。 ○ 同・階段〜新幹線ホーム   実音子、階段を駆け上がる。   ホームに上がると、遠くに篤樹の姿が見   える。 実音子「篤樹――っ!!」 篤樹「!?(気付く)」    ×   ×   ×   実音子と篤樹、向かい合っている。クラ   スメイトたちは少し離れた所に。   実音子、袋から不恰好なマフラーを取り   出し、篤樹にプレゼントする(マフラー   には『For ATUKI』と刺繍され   ている)。 篤樹「オ、オレに……?」 実音子「うん、何かしたくて……でも、季節  外れでゴメンね……」 篤樹「ううん、嬉しいよ。ありがとう」   篤樹、マフラーを巻く。 篤樹「暖かいな(笑顔で)」 実音子「よかった……(安堵の笑み)」 篤樹「そうだ!」   地面に置いてあるバッグから今川焼の入   った紙袋を取り出し、実音子に差し出す。 篤樹「確か三宅さんも今川焼き好きだったよ  ね? よかったら食べて(笑顔で)」    ×   ×   ×   フラッシュ   ミケの墓前に、篤樹が今川焼きをお供え   している場面。   転校初日の教室。 亜季「じゃあ、好きな食べ物は?」 実音子「今川焼!」    ×   ×   ×   実音子の目から涙がこぼれる。 実音子「突然現れた私と、仲良くしてくれて  ありがとう……」 篤樹「不思議なんだけど……」 実音子「……?」 篤樹「三宅さんとは、ずっと前から友達だっ  たような気がするんだ」 実音子「……!!(涙が溢れる)」   実音子、篤樹の胸に飛び込む。 篤樹「!?」 実音子「今まで、本当にありがとう……」    ×    ×    ×   発車のベルが鳴る。   ドアが閉まり、篤樹を載せた新幹線が走   り出す。   新幹線は徐々に小さくなり、見えなくな   る。   泣くじゃくる実音子を気遣うように、亜   季や亮が声をかける。 ○ 同・上空   レミエルとウリエル、上空から実音子達   の様子を見つめている。 レミエル「……」 ○ 空き地・ミケのお墓前 ウリエル「では、魂の浄化を命ずる……」 実音子「はい……」 レミエル「……(寂しそう)」 実音子「そうだ……! はいっ!!」   実音子、袋からマフラーを取り出す(マ   フラーには『For REMIEL』と   刺繍されている)。 レミエル「ボ、ボクにも……?」 実音子「うん!(笑顔で)」 レミエル「あ、ありがとう……(赤面)」 実音子「今まで、迷惑かけてゴメンね……」 レミエル「そ、そんな……(首を横に振る)」 ウリエル「さぁ、早く……」 レミエル「……はい」   レミエルが実音子に手をかざす。   レミエルの手から出た光の球体が、実音   子を包む。   徐々に消えていく実音子。 実音子「ねぇ、レミエル……私の彼に対する  気持ちって、もしかして……」 レミエル「さぁ……でも君は……」 実音子「……?」 レミエル「この町一、いや世界一、愛されて  いた猫かもしれないよ……(笑顔で)」 実音子「うん……」 実音子(M)「……野良猫として育った私は、  自分を不幸だと思っていた。でも……」   実音子、レミエルに笑顔で応える。 実音子「今なら幸せだったと思える。そう思  えるようになったのも、レミエルのお陰よ  ……」 レミエル「……(静かに涙がこぼれる)」 実音子「いつも側にいてくれて、ありがとう  ……」 レミエル「あ、あのさ……!」   声をかけようとするが、実音子はただ笑   顔でレミエルを見つめる。   消え行く寸前、実音子はミケの姿に戻る。   ミケを包んだ光は天上界に向かって一直   線に伸び、消える。 レミエル「あっ……」 ウリエル「この世に永遠の命などない……」 レミエル「……分かっています」 ウリエル「前世の記憶も消え、いつになるか  も分からない。だが輪廻転生に従い、再び  ……」 ○ 大学・外観 (M)「数年後……」   12月。 ○ 同・キャンパス内 篤樹「今日も寒いな」   大学生になった篤樹の姿(首には実音子   からもらったマフラー)。 友人A「いつもそのマフラーしてるよな。彼  女からのプレゼントか?」 篤樹「そ、そんなんじゃないよ(赤面)」 友人A「正直に言えよー」 篤樹「……から、もらったんだ」 友人A「聞こえないって(照れてる篤樹をか  らかうように)」 篤樹「今はどうしてるか、分からないけど…  …」   少し離れた陽だまりから、篤樹を見つめ   ている仔猫の姿。   更にその上空には、上級天使となり、少   しりりしくなったレミエル(下級との違   いは、服装の豪華さなどで。首には実音   子からもらったマフラー)。 篤樹「初恋の人からもらった、大切なマフラ  ーなんだ……」   レミエルが上空へと舞う。 仔猫「ふにゃ〜」   レミエルを見上げる仔猫。    完(400字詰め換算 24枚)